第17回MmVF海外調査 米国ITビジネス探求
テーマ:クラウドコンピューティングの利活用米国調査

期間:平成23年11月7日(月)~11月13日(日)7日間
訪問都市:サンタクララ、サンフランシスコ

■スケジュール

No 日付 都市 時間 交通 内容
1 11月7日
(月)
東京(成田)発
サンフランシスコ着
········|
サンタクララ

サンタクララ泊
17:25
9:30
NH008
専用車
空路、サンフランシスコへ
着後、サンタクララへ移動
13:30 ITOCHU Technologies
※シリコンバレーのクラウド事情

終了後、ホテルへ
2 11月8日
(火)
サンタクララ



サンタクララ泊
   
Cloud Computing Conference
& Expo 2011 West参加
at The Santa Clara Convention Center
3 11月9日
(水)
サンタクララ



サンタクララ泊
  専用車 10:30 Zenprise, Inc
http://www.zenprise.com/

14:30 Deskstream, Inc
http://www.deskstream.com/
4 11月10日
(木)
サンタクララ
········|
サンフランシスコ

サンフランシスコ泊
  専用車 10:00 Kaiser Permanente
https://www.kaiserpermanente.org/

13:30 Clorox
http://www.thecloroxcompany.com/
5 11月11日
(金)
サンフランシスコ


サンフランシスコ泊
  専用車 10:00 Bank of the West
https://www.bankofthewest.com/

調査のまとめ
6 11月12日
(土)
サンフランシスコ発

機中泊
11:10 専用車
NH007
空港へ
空路、帰国の途へ
7 11月13日
(日)
東京(成田)着 15:25   着後、解散

 

第17回 MmVF調査旅行について

ns02今回のMmVF調査旅行は、昨年に引き続きクラウドコンピューティングを主テーマとして実施された。丁度、クラウドエクスポがサンタクララ市で開催されており、一日はそこに参加して、各種セッションや展示説明に参加する事が出来た。

この調査旅行の直前にアップル社のスティーブジョブズ氏が亡くなり、時代の変化を推進してきた先導役を失って、ICT業界はどうなる事かと心配をする向きもあった。


ユーザへの接点である機器の将来設計は、まだ描き切れていないという不安は残る。一方で、ICTインフラとしての新しい方式であるクラウドコンピューティングは、丁度将来設計を急いでいるところであり、その一端を垣間見れればとの思いで、シリコンバレーを1週間駆け巡った。

以下に、この調査旅行の中で感じた事をまとめてみる。


(1) クラウドコンピューティングの動向。
  クラウドコンピューティングの流れは、昨年と比べて大きく変化している。
クラウドコンピューティングを実現する技術は、仮想化技術に集約されるが、昨年はその対象がコンピュータ(マシーン)やディスクであったが、今年はこれがデスクトップにまで及んできた。すなわち、エンドユーザがかなり柔軟に利用できるクラウドコンピューティング環境が実現出来るところまで来たという印象である。
IAASから、PAASまでたどり着いたという事で、いよいよSAASの展開が本格化する時期になったと言えよう。

そうなれば、エンドユーザにも大きな変化をもたらすし、SAASの開発はそれこそ誰でも参加できるであろうから、新しいサービスビジネスがどんどん世の中へ出てくる可能性がある。
更に、そうなれば、クラウドコンピューティングを使った事によるビジネス、社会、文化などへ影響を与え、新たなICT時代に入った意義を求められる事になろう。
ビジネスプロセスの変化、ソーシャルメディアへの影響、新しいコンテンツ利用環境への変化など、来年度はそこまで広がったクラウドコンピューティングの動向を見てみたい。

(2) モバイル機器などの包括的管理が、大きなビジネスになると予測される。
  iPodから始まったスティーブジョブズの革新が多くのモバイル機器の開発と普及につながり、今やいちいち「モバイル」と断らなくてもICT環境の末端はモバイルが当たり前の様に登場する。

このような環境では、企業などの組織において、そこに繋がっている末端機器の管理は非常に重要な課題となってくる。セキュリティの問題等を考えると、気が遠くなりそうだ。
そこで、包括的な末端機器(モバイルも非モバイルも含む)の管理は、結構面倒になる。それを効率よく実施出来る管理ソフトウェア、管理システムは、今後非常に大きなビジネスとして成長していくと予測される。

(3) ビッグデータという新しい分野への展開が見えてきた。
  Webが普及してから、世の中に存在する情報の量が膨大になってきた。あるいは、今まであった膨大な情報の一部が目に見えるようになってきたとも言える。
いずれにしろ、膨大な情報を有益に利用する5MmVF17th Report技術や方法論などを包括して「Big Data」と称し、そのような新たな分野の技術、学術を集約していく事が始まっている。 技術的には、従来の関係モデルに基づくデータベース技術とは異なり、そのモデルで扱いにくいデータを大量に処理するためのものが必要で、MapReduceというモデル、それを処理するシステムHadoopを中心に展開している。また、そのようBig Dataを扱うData Scienceといった境界領域、多重領域の学術的展開も始まっているとのことである。
我が国では数年前に行われた「情報大航海」というプロジェクトがあったが、残念ながら大きな流れにはならなかった。

Big Dataを扱おうという傾向は、クラウドコンピューティングと無関係ではない。クラウドコンピューティングにより、基盤とするハードウェアあるいはシステムは、クラウドのサービスを利用すれば良いわけで、ハードウェアから来る限界あるいは費用的負担などを軽減してくれ、膨大なデータも扱えるという感覚になる。
これは、ICT利用という環境に大きな影響を与える可能性がある。

(4) ICT業界の生き残り作戦は厳しいが、ハードウェアとソフトウェアを両方含んだ
······企業が最終的には有利である。
  米国は、現在経済的苦境に立たされており、世界の経済状況に多大の影響を与える可能性がある。ただし、ICT業界はまだまだ成長の続く一つであると感じる。 その中では、勿論厳しい生き残り作戦が戦わされていると思われる。現在、ICT業界は離合集散が激しく行われているようである。

今は、ソフトウェアの時代、あるいはサービスの時代と言われていても、長期的に見ると、ハードウェアとソフトウェアの両方を抱えているICT企業あるいは企業群が有利な展開をしているようである。

(5) シリコンバレーの栄枯盛衰は激しい。
  このMmVF調査旅行は、17回を数え、10年弱のシリコンバレーを中心とした米国ICT事情を調査してきた。その中で、ICT企業の生の変遷を直接見る事も何度かあった。
今回、メンロパーク市にあったSun MicroSystems社のキャンパスが、Facebook社に買われていた事が分かった。
Sun MicroSystems 社は、既にOracle社に買われており、その跡地を現在勢いのあるFacebook 社が購入したのである。

MmVFで何回か訪問したSilicon Graphics 社のキャンパスは、現在、Google社に購入され同社のキャンパスになっており、更に拡大を続けている。 このような激しい変化は、米国の活力の源であり、新規企業の興隆が盛んである事に証明にもなる。このような激しく厳しいICT企業群の戦いは、残念ながら我が国では見られない。

- 斎藤 信男
W3C バイス・チェアマン
慶應義塾大学名誉教授